前回の「ヤバくん身ぐるみ剥がし編」で、期待値と中央値の違いを学んだアバくん。しかし肝心の上着を手に入れられず、衣装はますます悲惨な状態に。
そしてハロウィン当日。
アバくんが用意したのは、裸に見える肌色の全身タイツと、腰に貼り付けた大きな「暴」の札。
「都合の悪いところは全部隠せばいい!」と開き直るアバくんに、ヤバくんが新たな数学の問題を突きつけます。
今回のテーマは、期待値がプラスでも起こり得る最悪の収支と、悪い方から5%に位置する収支の境界は違うということ。
第1章|ついに「暴」マークで登場! ヤバくん、絶句
前回、ヤバくんの上着を奪う作戦に失敗したアバくん。鉄製カボチャも壊れ、着飾るためのお金もありません。
しかし、そこで諦めるアバくんではありませんでした。
アバくんトリック・オア・暴ーっ! ヤバくん、ハロウィンの最終形態だ!
ヤバくんうわっ! なんだその格好!? 一瞬、何も着てないのかと思ったぞ!
アバくん安心しろ! 肌色の全身タイツだ! そして大事なところには巨大な「暴」マーク!
ヤバくん安心できるか! なんで普通の服を着ないんだよ!
アバくん前回お前が上着を貸してくれなかったから、衣装代の期待値をゼロにした!
ヤバくん衣装代を節約した結果がそれか! ハロウィンだからって何でも許されると思うな!
アバくんでもな、この「暴」マークには凄い機能がある。見られたくないものを隠せるんだ!
ヤバくんだったら、まずその格好を隠せ!
アバくんしかも収支表のマイナスも、この札で隠せば全部プラスに見える!
ヤバくん数字まで隠すな! それでは自分の損失リスクが分からなくなるだろ!
アバくんえっ? 期待値が+3,000円なら、最悪でも少し負ける程度じゃないの?
ヤバくんそれが今日の勉強だ。起こり得る最悪の収支と、悪い方5%の境目を比べてみよう。
第2章|期待値+3,000円を30回。夢の+9万円!?
前回と同じ説明用の架空モデルA・Bを使います。
1回あたりの期待値はどちらも+3,000円。今回は同じ条件で独立した試行を30回行い、途中で資金切れにならず、すべて完了した場合の最終累計収支を考えます。
アバくんまたモデルAとBか! もうすっかりハロウィンの常連だな!
ヤバくんAは25%で+24,000円、75%で−4,000円だったな。
アバくんBは60%で+7,000円、40%で−3,000円!
ヤバくんどちらも1回の期待値は+3,000円だ。
アバくんつまり30回なら3,000×30=90,000円! 俺の衣装代が復活する!
ヤバくん期待値合計が+90,000円というだけで、実際にその額を受け取れるわけじゃない。
アバくんでも30回もあれば、だいたい+9万円になるんじゃないの?
ヤバくんいろいろな結果があり得る。今日は特に悪い結果を見ていく。
アバくん悪い結果なら、この「暴」マークの裏に隠しておこう!
ヤバくん隠すな。最悪の収支がいくらになるか、まず計算するぞ。
アバくんまさか30回全部負けるなんて、そんな漫画みたいな展開はないよな?
ヤバくん確率がゼロでない限り、起こり得る結果の中から除外はできないんだ。
第3章|30回全敗なら、最悪−12万円!?
今回のモデルで30回すべて負けた場合、Aは−4,000円×30回、Bは−3,000円×30回となります。
ただし「起こり得る最悪」と「その結果が起こりやすい」は別問題です。
| 比較項目 | モデルA | モデルB |
|---|---|---|
| 1回の期待値 | +3,000円 | +3,000円 |
| 30回の期待値合計 | +90,000円 | +90,000円 |
| 30回全敗時の収支 | −120,000円 | −90,000円 |
| 30回全敗する確率 | 約0.01786% | 約0.000000000115% |
| 30回の下位5%点 | −8,000円 | +50,000円 |
※すべて説明用の架空モデルの計算値。下位5%点は最悪の収支とは異なります。また、全敗確率が極めて小さくてもゼロではありません。
アバくんちょっと待て! 30回の期待値は+9万円なのに、最悪−12万円!?
ヤバくんモデルAで30回すべて負ければ、−4,000×30=−120,000円だ。
アバくん俺の「暴」マークでも隠しきれない金額じゃないか!
ヤバくんモデルBなら30回全敗で−90,000円になる。
アバくんでも30連敗する確率は低いんだろ?
ヤバくんAでは0.75の30乗だから、約0.01786%だ。
アバくん1万回に1回より少し多いくらいか! 珍しいな!
ヤバくんBの30連敗は0.4の30乗。さらに極端に小さい確率だ。
アバくんじゃあ、そんなに珍しいなら最悪の金額は無視していいんじゃない?
ヤバくんそれも違う。起こり得る最悪の結果を把握することと、発生確率を評価することは別だ。
アバくん最悪−12万円という数字だけ見ても、どれくらい起きるか分からないわけだな。
ヤバくんそう。そこで、最悪の1ケースだけでなく、悪い方から5%の境目を調べるんだ。
第4章|下位5%点って、最悪の5%という意味?
収支の結果を小さい順に並べたとき、累積確率が初めて5%以上になる位置を、ここでは「下位5%点」と呼びます。
今回のように収支が飛び飛びの値を取る場合、境目以下の確率はちょうど5%ではなく、5%を超えることがあります。
アバくん下位5%って、100人いたら負けが大きい5人を選ぶイメージか?
ヤバくん大まかな方向はそう。ただし、今回は収支の確率分布の境界を計算するんだ。
アバくんモデルAの30回なら、どこがその境界になるの?
ヤバくん4勝26敗の収支、−8,000円だ。
アバくん24,000×4−4,000×26=96,000−104,000で、−8,000円か!
ヤバくんそう。3勝以下になる確率は約3.74%。4勝以下なら約9.79%になる。
アバくん3勝以下では5%未満だけど、4勝以下で5%を超えるんだな。
ヤバくんその通り。だからAの下位5%点は−8,000円になる。
アバくんモデルBはどうだ? 最悪は−90,000円だったよな。
ヤバくんBでは14勝16敗の+50,000円が下位5%点だ。
アバくんええっ! 悪い方5%の境目なのに、プラス5万円!?
ヤバくんそう。13勝以下が約4.81%、14勝以下が約9.71%。境界がプラスでも、マイナス収支の可能性がゼロになったわけではないぞ。
第5章|10回・30回・100回。最悪と下位5%点はこんなに違う
同じモデルでも試行回数が変われば、起こり得る最悪の収支と下位5%点の関係が変わります。
今回の表は、全回数を独立に完了する数学上の条件で計算したものです。
| 回数・モデル | 期待値合計 | 起こり得る最悪 | 下位5%点 |
|---|---|---|---|
| 10回・A | +30,000円 | −40,000円 | −40,000円 |
| 10回・B | +30,000円 | −30,000円 | 0円 |
| 30回・A | +90,000円 | −120,000円 | −8,000円 |
| 30回・B | +90,000円 | −90,000円 | +50,000円 |
| 100回・A | +300,000円 | −400,000円 | +104,000円 |
| 100回・B | +300,000円 | −300,000円 | +220,000円 |
アバくん10回のモデルAは、最悪も下位5%点も−40,000円で同じだぞ!
ヤバくんAでは最初から10回全敗する確率が約5.63%ある。だから下位5%点が最悪の金額と一致するんだ。
アバくんBの10回は最悪−30,000円なのに、下位5%点は0円!?
ヤバくんそう。Bでは10回中3勝7敗の0円が5%点の境目になる。
アバくん30回になると、Aは最悪−12万円、下位5%点−8,000円。
ヤバくんBなら最悪−9万円、下位5%点+5万円だ。
アバくんさらに100回なら、Aは最悪−40万円なのに、下位5%点は+10万4,000円!?
ヤバくんBでも最悪−30万円に対して、下位5%点は+22万円になる。
アバくん最悪のマイナス額は大きくなってるのに、5%点はプラス側に動いてる!
ヤバくん同じ条件で独立に積み重ねる今回のモデルでは、そういう違いが生まれるんだ。
アバくんじゃあ100回まで粘れば儲かるってことだな!
ヤバくんそこは違う! 100回完了できると仮定した数学上の分布であって、実際に打ち続けることを勧める数字じゃない。
第6章|下位5%点より悪い結果もある!
下位5%点は、悪い方から見た「境界」です。
それより悪い結果が存在しないという意味ではなく、悪い方5%の結果を平均した金額でもありません。
アバくんなるほど! じゃあ下位5%点が−8,000円なら、それ以上負けることはない!
ヤバくんまた間違えた。−8,000円より悪い結果もあるぞ。
アバくんえっ!? じゃあ下位5%点って、何を教えてくれるんだ?
ヤバくん収支分布の悪い側で、累積確率が5%に達する境界だ。
アバくんそれより悪い結果は、まとめて5%より少ない確率なんだな。
ヤバくん今回の定義ではそうだ。ただし境界と同額の結果まで含めると、ちょうど5%とは限らない。
アバくんじゃあ、悪い方5%を本当に集めて、その平均を計算したらどうなる?
ヤバくん30回のモデルAなら約−36,105円。Bなら約+33,671円だ。
アバくんAは下位5%点−8,000円なのに、悪い方5%の平均はもっとマイナスなんだ!
ヤバくんそう。境界より悪い結果も含めるからな。境界と同額の結果は必要な割合だけ含めて計算している。
アバくん「最悪の収支」「下位5%点」「悪い方5%の平均」は、全部違う数字ってことか!
ヤバくん正解。一つの数字だけで損失リスクを全部説明したつもりにならないことだ。
第7章|実際のパチンコへ数字をそのまま持ち込まない
この比較は、あくまでも架空の2結果モデルです。
実際のパチンコは投資途中の資金状況、回転率、出玉、交換率、遊技時間、終了条件などによって収支が変化します。
アバくんじゃあ実際の台も30回分を計算すれば、下位5%点が簡単に分かる?
ヤバくんそうとは限らない。そもそも実機の収支分布は、この2結果モデルとは違う。
アバくん大当たり、RUSH、LT、実際の出玉、それに投資額も関係するか。
ヤバくんそう。収支の定義や条件をそろえなければ、正しく計算できない。
アバくん30回完走の最終収支と、途中で軍資金がなくなる問題も別なんだよな。
ヤバくんその通り。今回の表には途中の資金切れによる終了を含めていない。
アバくん下位5%点がプラスなら、現金が少なくても安心して続けられる?
ヤバくんそれも違う。途中の投資額や資金不足の可能性は、最終収支の5%点だけでは判断できない。
アバくんつまり期待値・中央値・標準偏差・最悪の収支・下位5%点を分けて考える必要があるんだな。
ヤバくんそう。それぞれ見ているものが違う。どれも利益の保証ではない。
アバくん分かった! 生活費を使って結果が良くなるまで続ける、なんて考え方はしない!
ヤバくん予算と時間の上限を優先しろ。数字は無理をするためじゃなく、判断を誤らないために使うんだ。
第8章|「暴」マークでも隠せない、期待値の落とし穴!
数学の勉強もいよいよ終盤。
しかしアバくんは、まだ大きな「暴」マークを身につけたまま、何かを隠そうとしています。
アバくんよし! 今日の勉強をまとめるぞ! 30回の期待値はAもBも+9万円!
ヤバくんそう。だが最悪の収支はA−12万円、B−9万円だ。
アバくんそして下位5%点はA−8,000円、B+5万円!
ヤバくん正解。最悪の収支と5%点は同じとは限らない。
アバくんしかも悪い方5%の平均とも違う。俺もだいぶ数学に詳しくなったぞ!
ヤバくん今回は理解できたようだな。で、その「暴」マークはいつ外すんだ?
アバくん実はこの札の裏に、俺の収支表が貼ってあるんだ!
ヤバくんおい! マイナスの部分を隠すために持ち歩いてたのか!?
アバくん期待値+9万円だけ表に出せば、みんな俺を勝ち組だと思ってくれるだろ!
ヤバくん最悪の結果を隠したら、今日学んだ意味がないだろ! そしてその衣装もどうにかしろ!
アバくんじゃあ「暴」マークの代わりに「期待値+3,000円」って大きく書いて、次のハロウィンまで着続ける!
ヤバくん普通の服を着ろーっ!! 数字も格好も、都合の悪いところだけ隠すなーっ!!
今回のまとめ: ①期待値がプラスでも、起こり得る最悪の収支がプラスになるとは限らない。②下位5%点は、悪い方から見た累積確率5%の境界であり、最大損失ではない。③下位5%点と悪い方5%の平均も違う。④今回の数値は同じ条件で独立に所定回数を完了する架空モデルの結果であり、現実の遊技収益や必要資金を保証するものではない。
関連する井戸端会議: 前回・期待値+3,000円なのに中央値−4,000円!?、鉄製カボチャ完全武装編、軍資金切れ確率編。
※登場人物・会話・衣装・収支モデルは創作です。実在機種の勝率・最大損失・下位5%点を示すものではありません。全身タイツと「暴」マークは架空の仮装表現であり、実際の露出を描写するものではありません。無理な遊技継続を推奨しません。
今回登場した重要語句
今回登場した重要語句の意味は、用語集で確認できます。読み終えたら、ブラウザの「戻る」でこの記事に戻れます。