店員さんと目が合った。その直後、店員さんがインカムで何か話した。
聞こえない会話ほど、なぜか想像の中ではよく聞こえる。
今日のアバくんは、すでに自分が話題になっていると確信しているようです。
※この記事のインカム会話は、説明用の架空の例です。特定のお店の実際の会話や運用を紹介するものではありません。
目が合った瞬間、脳内で緊急会議が始まった
アバくん今、店員さんと目が合った直後にインカムで何か言ってた
ヤバくんそれで?
アバくん俺の入店が本部に報告された
ヤバくんお前は何の重要人物なんだよ
アバくん『例の男、来ました』って
ヤバくん自分で自分に伏線を張るな
店員さんがこちらを見て、何か話している。
それだけで「自分について話したのかな」と感じることはあります。ただ、目が合ったことと、会話の内容が自分についてだったことは別です。
こちらから分かるのは、店員さんが何かを伝えていたというところまで。相手も内容も分からないのに、脳内では会議の議事録まで完成してしまいます。
アバくんでも、口元が『アバくん』って動いてた気がする
ヤバくんその距離で読唇術できるの?
アバくんいや、名前を知ってる前提で見てた
ヤバくん字幕をお前が付けたんじゃねえか
聞こえない会話に、勝手に字幕を付けてみると
同じ「店員さんがインカムで話す」という場面でも、想像できる内容はいろいろあります。
例えば、こんな連絡だったらどうでしょう。
| アバくんが付けた脳内字幕 | 別の内容を想像するなら |
|---|---|
| 「例の男が来ました」 | 「入口付近の対応、お願いします」 |
| 「こちらを警戒しています」 | 「呼び出しの対応に向かいます」 |
| 「長いこと同じ台にいます」 | 「この通路を確認してもらえますか」 |
| 「何かを企んでいるようです」 | 「今、手が空いている方はいますか」 |
右側も、実際にそう話していたと分かるわけではありません。一つの動作から、会話の内容を一つに決めることはできないという例です。
アバくん『手が空いている方』って、俺のことかも
ヤバくんお前は勤務してないだろ
アバくん急に戦力として数えられる可能性もある
ヤバくんさっきまで警戒対象だったのに、もう採用されたの?
インカムの向こうにいる人から連絡が来て、その返事をしていた可能性もあります。
自分から見えるのは会話の片側だけ。それなのに、登場人物も目的も全部決めると、短い業務連絡が壮大な物語になってしまいます。
店員さんがうなずいた。それ、俺への判定?
アバくん今度は話しながらうなずいてた
ヤバくん何か返事したんじゃない?
アバくん俺についての審議が通ったんだ
ヤバくん何を申請したんだよ
アバくん何もしてない
ヤバくんじゃあ勝手に審議を始めるな
うなずく。笑顔になる。少し真剣な顔になる。
会話中の表情が見えると、内容まで分かった気になることがあります。でも、その表情が何に対する反応なのかは、聞こえていなければ分かりません。
アバくん笑ってたら、俺のことを笑ってる気がする
ヤバくんお前が笑うとき、毎回近くの人について笑ってる?
アバくんいや、昨日の変な動画を思い出すこともある
ヤバくん自分には豊かな事情があるのに、店員さんには一個しか許さないんだな
人の表情には、こちらから見えない事情があります。
目が合った直後だから気になる。その感覚はあっても、感覚だけで会話の中身までは埋められません。
本当に自分の対応を相談していることもある?
アバくんじゃあ、俺について話していることは絶対にない?
ヤバくんそこまで決めるのも違うだろ
例えば、こちらが質問をして、その答えを別のスタッフに確認している場面。あるいは、対応を引き継いでもらう場面。
そんな状況なら、自分の用件について連絡している可能性はあります。
でも、自分に関する連絡と、自分への悪口は同じではありません。
アバくん俺の質問が会議にかけられている
ヤバくん確認してくれているだけかもしれないだろ
アバくん『このお客様、質問が難しいです』って
ヤバくん何を聞いたんだよ
アバくんトイレどっちですか
ヤバくんその質問で議会は開かれない
分からないことをその場で確認するのは、適当に答えないためとも考えられます。
インカムを使ったというだけで、歓迎されたとも、警戒されたとも、からかわれたとも決まりません。実際にこちらへ何を説明したか、どう対応したかを見る方が、想像より確かな材料になります。
気になったとき、脳内会議を閉じるには
アバくんでも、一回気になると、次のインカムも全部気になる
ヤバくん脳内字幕が連続ドラマになってるな
アバくん次回予告まで聞こえる
ヤバくん聞こえてないんだろ
気になったら、まず「見えたこと」と「自分が付け足したこと」を分けてみます。
- 見えたこと:店員さんと目が合った。
- 見えたこと:その後、インカムで話していた。
- 付け足したこと:自分のことを報告していた。
- さらに付け足したこと:悪い意味で話していた。
後ろの二つは、会話を聞いていない限り、その場では確かめられていません。
困っていることがあるなら、その用件を普通に伝えれば十分です。対応を待っていて状況が分からないなら、「先ほどお願いした件は、今どうなっていますか」と尋ねる方法もあります。
アバくん『俺について何を話しましたか』じゃなくて?
ヤバくんまず、お前が何をお願いしているかを確認しろ
アバくんまだ何もお願いしてない
ヤバくん今日はずっと、自分で事件を作ってるな
インカムの向こうに、毎回自分がいるわけじゃない
聞こえない会話は、自由に想像できてしまいます。
だからこそ、目が合ったタイミングや表情だけで「自分のことだ」と決めると、何も起きていないところで一人だけ忙しくなります。
アバくん今日は入店報告、警戒、採用、審議まで進んだ
ヤバくん全部お前の頭の中でな
アバくん店員さんより俺の方が連絡事項多い
ヤバくんまず、その脳内インカムを切れ
店員さんのインカムが気になったら、字幕を付ける前に一呼吸。
聞こえていない会話には、まだ字幕なしでいいのです。
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